écho (2020)
目を瞑っても、思い出せない
瞼に注いだ光 いつかの金木犀
砂埃にまみれて歩き続けた日
湿度も音も 色も速度も
ばらばらに割れた破片の寄せ集めのように 不揃いで、修復されることのない記憶
それでも、耳を澄ますと かすかに鳴り響いている
暗い浜辺に寄せる波のように 地底を流れる水脈のように 漆黒に浮かぶ星のように
からだの中に
残響が
(「écho」テキストより)